カテゴリー「経済・政治・国際」の6件の記事

2008年9月25日 (木)

投資銀行残酷日記

たしか「なぜ投資のプロはサルに負けるのか?」の藤沢数希氏が薦めていた(気がする)のが本書。先月に読了していたのだが色々あってentryを上げるのをサボっていた・・・ら、リーマンが破綻してびっくり。

が、もし本書を読んでいなければ、リーマン破綻に対する感想が全然違っていただろう。きっと「リーマンの人もたいへんだなぁ。高給取りもリスクが高いから仕方ないか」と思っていたに違いない。

しかし、本書を読んだ今となっては違う。きっとリーマンの社員たちは、しれっと次の職についたに違いない。(ただ、自社株を持っていた社員の人はご愁傷様だが、それこそ自業自得。「卵はひとつのかごに盛るな」。)

本書には何が書いてあるのか?

  • 投資銀行にはどういう人たちが、何を期待して入社するのか?
  • 投資銀行という職場はどんなところか?
  • 投資銀行という仕事は実際はどんなことをしているの?

MBAホルダーがひしめき、「ロケット工学」の技術者が大挙して押し寄せるという投資銀行とはどんな世界なのか?どれだけの知性と、勇気が試されるのか?どんなスリルと達成感を得られるのか?そしてそれに見合った収入について彼らはどう考えているのか?

本書で僕が得た教訓は、「スキルが高いから、頭がいいからお金がもらえるわけではない」ということだ。資本主義社会では、お金を持つものがお金を得る。お金が好きでお金の近くに居たい者がお金を得る。

大事なことはお金を得るということを忘れずに、そこに邁進すること。投資銀行とはそういうところだ。

そこには、「効率性」「協調性」「革新性」などは求められない。ひたすらボスの無理難題に耐えて生き延びることだ。そうすれば数十万ドル数百万ドルのサラリーを手にすることができる。

結局のところ、金とは人と人との間を流れるものであり、つまり「欲望」が最もストレートに表現される「場」でもある。人の欲望を満たせれば、それが金になる。金がほしい人相手に商売をするのが最も金になる。人の欲望が渦巻く投資銀行は、知性や協調性や革新性よりも本能こそが似つかわしい。

サラリーマンとして、効率化や生産性向上などを追求しなければならない身としては、本書を読むとなにかむなしさを感じるところもある。「こんなの必死になって効率化したって、結局何十億儲かるわけでもないんでしょ?投資銀行の稼ぎと比べたらごみみたいなもんだよ。そんなにお儲けを出したけりゃ、投資銀行の仕事すりゃいいのに・・・」といっても僕はしがないSEに過ぎないし、投資銀行の過酷な生活には耐えられそうもない。(とはいっても、ちょっとはやってみたい気もする)

リーマン破綻後、世界がどうなるか、面白い局面になってきた。もし、リーマン以前の投資銀行の世界をのぞきたい方は是非。今後こんな世界が続くかどうかは不明・・・。

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2008年5月28日 (水)

インドの衝撃

2007年1月に偶然NHKスペシャル「インドの衝撃」の第一回を見て、タイトル通り「衝撃」を受けた。貧しさから抜け出すために必死に勉強をしていた。ラマヌジャン数学アカデミーの、広く壁もない教室ともよべないような教室にすし詰めになりながら、雨が脇から吹き込んでも気にせずIIT合格を目指して必死に勉強する姿は日本では見られないものだ。インドでは理科系に秀でていることが評価され、また報われもする。日本とは学ぶ者の必死さが違う。

IIT(インド工科大学INDIAN INSTITUTES OF TECHNOLOGY)のインドトップクラスの頭脳と伍していけるだけの頭脳が質、量ともに日本にあるのかは甚だ疑問に思った。現在の日本の世界における地位は過去の遺産によってかろうじて保たれているのではないだろうか。僕らは彼らを相手にこの先数十年戦っていかなければならない。

と同時に、本書はインドの「中間層」の台頭による消費の拡大、市場開放による農村の貧しさの実態、対アメリカで対等以上に渡り合う外交能力、民主主義であるがゆえの不安定な政権、など、様々な衝撃についても語っている。

また、核実験や核拡散防止に関するアメリカとの外交で、双方の当事者にインタビューして、当時何を考えていたのかについて語った章と、当時の発表を客観的に述べた章で、視点によって見方が変わるのが興味深かった。

なお、BRICsという言葉を生み出したゴールドマン・サックスのレポートの共同執筆者であり、二十代半ばにして名声を得たインド人女性、ルーパ・プルショサーマンの愛らしさにも驚かされた。

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2008年4月30日 (水)

ウィキノミクス

読み終わっていたのだがentryを上げていなかったので、書いておく。

簡単に言ってしまえば、「様々な技術や仕様のオープン化することにより、自社内だけではなく、世界の優れた人材を活用することができ、それによってより生産性が高まる」という事について語っている本。

以前にも書いたが、僕は「富の未来」と「ウィキノミクス」と「フラット化する世界」は個人的には今の時代を概観するための必読書三冊(上下も数えると五冊)だと思っているのだが、その中で本書は特に多国籍企業のとるべき戦略について語っている。

金鉱山の会社の印象的なエピソードで幕を開け、ボーイング、IBM、中国のバイクメーカー、BMW、P&Gなどの新旧の会社が、インターネットとオープン化の時代に「マスコラボレーション」によって如何に成功を収めているか、収めつつあるかについて、多くの証言に基づいて語る。

本書ではマスコラボレーションが万能ではないし、何でもオープン化すればよいというわけではないとは言いつつも、それこそが企業が今の時代を勝ち抜いていくためには大事な事であると語る。翻って自分の仕事の現状を見ると、とても仕様のオープン化など言っているどころではなく、ひたすらクローズドな世界になっている。それが会社にとって長期的にいいことなのか悪いことなのかは分らないが、単純に生産性向上という視点で見れば、仕様をオープン化した方が低コストでできる気がしてならない。そして、企業で働く個人としても、マスコラボレーションの時代がうれしいことなのかどうなのか難しいところだと思う。容易に世界中から高い技術を低コストで使うことができるとするならば、自分がそこに存在している意義はなんだろうか?これは哲学的な問いなのではなくて、単純に、自分は会社に雇われるだけの価値を持ちうるのか?という問題だ。要は「オレ、用なしになっちゃうんじゃない?」ということ。

ボーイング社は個々のパーツの設計業務から手を引き、世界中のパートナーの調整役として生きていく道を選んだとある。僕も、世界中のパートナー各社に個々の設計は任せて、自分はその調整役として生きていけるよう、スキル選択していくことが経済合理的な行動なのだろうか?技術を学ぶべきではない?未来は分らない

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2008年4月29日 (火)

雨の降る日曜は幸福について考えよう

この詩的なタイトルの本は、日経新聞の日曜版に連載されていた。第一回目は友人が自殺した話から始まる。

橘玲の巧さはタイトルにあると思う。そしてその巧いタイトルに負けない、それ以上の内容を持っている。たとえタイトルから想像されるようなメルヘンチックな話題ではないにしても。

本書は、橘玲ファンにとってはおなじみの内容(保険は宝くじ、持ち家は高リスクな投資、国民年金は払った方が得で、サラリーマンの厚生年金は損)が繰り返される部分もあるが、新たな発見もある。ひとつは、橘玲の過去について少し語られていること。またFAQの章では「あなたは誰ですか?」という問いに対してもちろん明確な回答は無いが、誠意を持って答えている。そしてもうひとつは、「PARTII正しさの問題」と参考文献において、橘玲が自分自身の思想的背景について語っていること。僕は、著者の、現実主義的であると同時に語り口が詩的で、達観しているかのような物言いに魅力を感じていたのだが、まさか、「ポストモダン」の影響下にあったとは。

僕はファインマンとドーキンスが好きで、彼らが、ある種の哲学を「中身のない言葉遊びに過ぎない」と断じているのを読んでから、「ポストモダン」については少々疑いの目で見ている。特にドーキンスは「ポストモダン」が大嫌いみたいで盛んに著書で馬鹿にしている。なので、橘玲に「ポストモダン」の影があるとは驚きだった。(ちなみに僕は「ポストモダン」についてのちゃんとした知識は無いので深追いはしない)

詩的なタイトルに反して、現実的な内容(曰く、「知人はこの底辺校に奉職しているが、自分の職場は教育機関ではなく、生徒の収容施設だと言う。わが校の責務は、日中、異様な風体の子供たちが町を徘徊し、健全な社会生活を脅かすのを阻止することだ。」)でありながら、哲学的な背景を持っている。そんな多重性を持った本をものす橘玲は稀有な作家だと思う。

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2007年11月24日 (土)

マネーロンダリング入門

 入門と銘打っている本の中には、著者自身内容を良く分っていなくて、読者をなめているような内容のものがあります。そういう本ははっきり言ってクズなのですが、幸い最近はWebの書評(amazonやらいろんなブログ)があるおかげで、ハズレを引くことが少なくなってきました。Webという、健全な批評の場ができたことで、内容的にしっかりしたものだけが残るようになった気がします。もしそれが僕の印象に限ったことだけではなくて事実だとしたら、幸いなことだと思います。

 さて、そこで本書「マネーロンダリング入門」です。僕は黄金の羽以来の橘玲ファンなのですが、本書については、おそらく内容的に小説「マネーロンダリング」とかぶるところが多いのだろうと勝手に判断し、読んでいませんでした。しかし、近所のブックオフで350円で売っていたのを発見。即購入しました。
#ブックオフっていうのは、恐ろしいところですね。

続きを読む "マネーロンダリング入門"

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2007年3月22日 (木)

原価計算!

原価計算なのです。簿記でよく分からないのは。「しくりくりし」はぁ?何ですかその変な用語。要は、「今期に売った値段は分かるけど、その原価っていくらだっけ?原価分からんと利益も計算できんじゃん」ってことです。

「要は仕入れた分でしょ?仕入勘定合計すればいんじゃね?」

「いやいや、前期から繰り越した分もあるし、仕入れた分だけ全部売れたわけじゃないから、原価≠仕入なのよ」

「ってことは、原価=前期からの繰越商品分+今期仕入れ分-期末に残って来期に繰越す分ってことね」

「そうそうつまり、

売上原価xxx / 繰越商品xxx      ←前期からの繰越商品(資産)を売上原価(費用)に振替える(計上する)

売上原価zzz / 仕入zzz           ←今期の仕入(費用)を、売上原価(費用)に振替える(計上する)

繰越商品yyy / 売上原価yyy    ←今期末に残って来期に繰越す商品を、繰越商品(資産)に設定し、その分売上原価(費用)を減らす

ってことなのよ」

「ふむ。で、『しくりくりし』の呪文は?」

「あんま、その呪文を先に覚えるのはどうかと思うけど・・・原価計算のやり方を思い出すきっかけ程度にしときましょ」

「で?」

「その話はまた今度」

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